刀がニセモノだという証拠はどこでしょうか?

“「見てください。こんなものを倉から見つけたんですよ」
町内会長の関口さんが私の事務所に、細長い堤を持って訪れてきた。顔にはニコニコと満面の笑みを浮かべている。
私は、イヤな予感しかしなかった。
果たして、関口さんが持ち込んできたのは、やっかいな代物だった。

「ほら、見てくださいよ。これ。刀ですよ、刀!」
包みの中から出てきたのは、細長い箱に収められた一振りの刀だった。
「そうですねえ。正確に言うと、この長さなら脇差しでしょうね」
「そうなんですよ。箱に銘が記してありましてね。刀自体は備前長船の作の太刀を打ち直ししたものだそうです」
「ほほう。それはすごいですね……本物としたら」
私はクチだけで驚いて見せたが、関口さんの興奮は止まらない。

「なに言っているんですか。本物に決まっているでしょう。何しろこれは天皇陛下からの下賜品ですから
見てください。ここ! ここに、大正10年と銘が彫ってあるでしょう?『第一次世界大戦の武勲により』と。ってことは、これは、天皇陛下からの賜り物ですよ! これはすごい価値がありますよ!」
関口さんは刀を抜いて色々な角度からためすがえす眺めている。
「う~ん、剣の拵えも見事だし、刃文もきれいだ。ほら、この腹のところ。ここに模様が浮き出ているのが刃文というのですよ。
この黒光り……本当にキレイだ。これは本物ですよ、間違いなく」
関口さんは自慢げに言った。

「刀としては本物かも知れませんが、下賜品というのはウソだと思いますよ。それは、刀には素人の私でもわかります」
私が言うと、関口さんは泣きそうな顔になった。
「えっ? な、なぜですか?」”

↑刀がニセモノだという証拠はどこでしょうか?
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大正10年は、第一次世界大戦が終わったばかりの年です
これでもまだわからないですか・・・?
答えと解説を見る▼
第一次世界大戦の武勲により

解説

第二次世界大戦が始まるまでは、第一次世界大戦という呼び方はありません。単に「大戦」と呼ばれるだけです。2回目が始まるまでは、区別する必要が無いからです。なので、第一次世界大戦直後の下賜品なら、「一次」とは書かれないはずです。
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