五味の部屋にはしおれた花が残っていました。それを見た「私」は、なにを不自然に思ったのでしょうか? 

“まるでその部屋は、彼のためのステージのようだった。
彼の死体と左手首から流れ出た血の跡、手首を切るのに使ったと思われるカミソリ、そして遺書を除いて、部屋の床一杯に敷き詰められた真っ赤なカーペットの上には全くなにもない。家具もない。
唯一、出窓でしおれた黄色いバラの花が花瓶に生けられていたのがかざりのようだが、それはまるで死体に捧げられたもののようだ。

彼の名前は五味。ビジュアル系ロックバンド“Q-Zoo”のボーカリストにして、リーダーだ。
「キュー……ずぅ? 何と読むんだ、この名前は?」
遠藤警部が首を捻ると荒井刑事が注釈した。
「ク・ズゥ、ですよ。今人気なんですよ」
「クズの五味。逆さまにすると五味クズ、か。若い者のネーミングセンスはわからん」
「ちょっと調べたところによると五味という男、ホントにクズみたいですね。ファンやグラビアアイドルと何人も付き合っているみたいです。八又とか九又とか、かけてたようで」
恋人のいたことのない荒井刑事が言った。

「八又。オロチか、こいつは」
遠藤警部は言い、そして自分の冗談のセンスにひとりくっくっくと忍び笑いを漏らした。
「部屋にこうなにも無いと、鑑識するものが少なくて、大鳥さんは楽そうですね?」
荒井刑事が軽口を叩く。
「そんなことないですよ。これだけ広いカーペットから、髪の毛や細かいフケが落ちてないか調べるのは一苦労です」
「自殺なんだから、そんなに真剣に調べなくても……」
「そういうワケにはいきません」
大鳥鑑識官がマジメに答える。
「そう。それにこれはたぶん、自殺に見せかけた殺人ですしね」
私はしおれた花と水しか入ってない花瓶を覗き込みながら、言った。
「えっ、なぜですか?」”

↑五味の部屋にはしおれた花が残っていました。それを見た「私」は、なにを不自然に思ったのでしょうか? 
ヒント1を見る▼
しおれた黄色いバラを放っておくと、花びらがカーペットに落ちて……?
これでもまだわからないですか・・・?
答えと解説を見る▼
カーペットの上には全くなにもない

解説

花がしおれているのなら、花びらが落ちているはずです。
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